デザインした心拍数
取得したのは、HADOというeスポーツの練習中の心拍数だ。
この時期の練習は、大会に向けてどうやったら勝てるのか、チームで話し合ったり、動きを試したり。所属するチームは、男女混合で年齢もバラバラだ。次の試合は、シーズンの一番大きい大会に出られるかどうかが決まる重要なタイミングで、楽しみながらも緊張感のある練習だったという。結果的にその後の試合に勝つことができ、大会にも出ることができた。
今回の大会期間でも、世代が違う人たち、hadoをやっていなかったら出会えない人たちとのつながりができたという。
スポーツは自分を受け入れてくれる環境だった
古田さんはいわゆるLGBTの「T:トランスジェンダー」。戸籍上は女性だが、自身が認識するジェンダーは男性だった。こうした背景があったことで、幼少期から本当の居場所や、本当の友人がいないような感覚を持って生きてきた。
例えば、学校だと男女で分かれる機会が多くあり、性別で区別することが多かった。 見た目の性と自認する性が異なっていて、女性とも男性ともいいようのない感覚が自分の中にあり、そういった環境で素直に自分を出すことができなかったという。友達とも、どこか表面的な関わりになっている感覚で、ずっともどかしさを抱えていた。
しかし、高校生の時に興味があった女子ソフトボール部に入部したことで、なんでも話せる本当の友達ができて、性自認についても初めて打ち明けることができた。 スポーツは、性別関係なく共通の目的に向かうことができる。だから自分の素を出せたという。
その後も、度々、スポーツの力で人と繋がることができる喜びを感じる出来事がいくつかあった。
それは、大学3年生のとき、ラオスに一人旅に行ったときの出来事。言葉も全くわからない地元の子供達がサッカーをしていて、そこに混ぜてもらったことがあった。言葉は通じなくても一緒にサッカーをやったことで、とても仲良くなることができた。
また、オリンピックなどスポーツ観戦のときには、勝ったときなどに隣の知らない人ともハイタッチするようなあの空間、話したこともない人とでも繋がりを感じられることに感動を覚えたという。
スポーツに触れられる機会を日常に
こうした経験を通して、人と繋がる喜びを感じられる環境を作るために、スポーツを広める活動に取り組み始めた。スポーツの得意不得意は人それぞれだ。古田さん自身も、体力的には男性と勝負をするとどうしても勝てないことがある。だからこそ、性差、年齢差が影響しにくいマイナーなスポーツについても関心が高い。
「得意不得意は人それぞれ。スポーツが苦手な人でも、いろんなスポーツに触れていけばどれか一つは好きになる。だからスポーツを嫌いにならないでほしい。」 そう語る古田さんがプレーしたスポーツの種類は、これまでに100種類を超えている。
性別や年齢を問わず、誰でも楽しめるスポーツは増えてきている。しかし、それらはマイナースポーツと言われる故に、認知度はまだまだ低いのが現状だ。最近では、ショート動画を活用した発信にも取り組むなど、工夫を重ねている。
また、リアルでのイベント開催などを通して、スポーツをより身近に感じてもらえる機会を提供している。発信するだけでなく、自分もスポーツをプレーすることで、実際に人と関わっていくことが重要な時間と考えているからだ。
「今後は、より多くの人が人生の充実感を得られるきっかけとしてのスポーツを日常的にするため、スポーツの体験・観戦のイベントだけでなく、映画など様々な手段を通して、スポーツの魅力を発信していきたい。」と語る、古田さんの挑戦はこれからも続く。
2023.1.18 21:00-22:00
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古田 優 / yu furuta
スポーツライフデザイナー。
「暮らしをスポーツでワクワクに。」をテーマに、スポーツ100種目以上を経験。
スポーツコンテンツプロデュースやスポーツショート動画制作を行う。